化学工学論文集
Online ISSN : 1349-9203
Print ISSN : 0386-216X
ISSN-L : 0386-216X
37 巻, 3 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
編集ノ-ト
移動現象,流体工学
  • 牛田 晃臣, 長谷川 富市, 内山 広成, 鳴海 敬倫
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2011 年 37 巻 3 号 p. 203-210
    発行日: 2011/05/20
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル 認証あり
    粘弾性流体や複雑流体の流動特性は,数多くの研究者によって明らかにされてきた.しかしながら,その多くが,ポアズイユ流れに代表されるせん断流動を対象としており伸張流動を対象とした研究報告は少ない.その中でも,オリフィス流れを対象とした伸張流動において,ニュートン流体とされている流体においても弾性が発現するとの報告がある.本研究では,伸張流動の一つであるスリット流れを用いて,水,希薄高分子水溶液,界面活性剤水溶液のジェット推力と圧力損失を測定することでスリット流れにおける種々の液体の流動特性を明らかにした.その結果,従来の報告の通り,代表長さ68 μm以下のスリットにおいて,水がNavier–Stokes方程式による予測値よりも減少した.ジェット推力・圧力損失から算出した伸張応力は,おおむね同じ値を取り平均流速で整理することができ,傾きが約2.1となることを示した.界面活性剤水溶液は,活性剤の持つ極性により異なる結果となり,ジェット推力・圧力損失の値が陽イオン系<非イオン系<陰イオン系の順に予測値からの減少幅が大きくなった.これは固液界面の電気的効果によって引き起こされたと推察した.希薄高分子水溶液は粘弾性の効果により予測値から大幅に減少した.これは従来の報告と同じ結果となった.
  • 井上 義朗
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2011 年 37 巻 3 号 p. 211-222
    発行日: 2011/05/20
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル 認証あり
    分子拡散効果が無視できる場合の層流混合パターンの時間変化は,速度場が既知であれば一意的に確定し,原理的には速度ベクトルを時間積分することにより曖昧さなく計算することができる.しかし,3次元撹拌槽内の混合場のような複雑な流れ系では,たとえ層流といえども,混合機構とその物理的・幾何学的イメージの全体像を把握することは極めて困難である.他方,撹拌槽内の層流混合では,撹拌翼の羽根先端部から伸びる流脈線が鋳型となって混合が進行することがわかっている.本論文では,この流脈線とその上での写像関係に基づく,新しい層流混合モデルを示す.これにより,従来の単純な混合モデルよりも,混合場の背後に存在する時間的に不変な規則的構造と,それに従って時間変化する混合パターンの可変的特性との相互関係,およびその物理的イメージがより明確に捉えられるようになった.
分離工学
  • 前田 正太, 黒木 久仁子, 大榮 薫, 大島 達也, 馬場 由成
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2011 年 37 巻 3 号 p. 223-228
    発行日: 2011/05/20
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル 認証あり
    バイオエタノールの濃縮には主に蒸留が用いられているが,多量のエネルギーが必要となる.そこで本研究では吸着法に着目し,省エネ型のバイオエタノール分離・濃縮法の開発を行った.吸着材には疎水性吸着材として知られるハイシリカゼオライトを用いた.その疎水性や細孔構造を利用して発酵液からのエタノールの濃縮を試みるため,エタノール吸着特性の評価を行った.さらにゼオライトが酵母の増殖・発酵に及ぼす影響を明らかにするために,ゼオライト共存下で培養試験を行った.
    市販ゼオライトを用いたエタノール吸着において,吸着等温線はFreundlich型を示し,5 vol%エタノールからの吸着容量は最大で約90 mg g21であった.エタノール吸着にはゼオライトの疎水性,マイクロ孔径およびマイクロ孔容積割合が影響していることが示唆された.ゼオライト共存下での発酵試験では,ペレット状ゼオライトを添加することにより発酵能および増殖能の増大が確認された.
  • 今駒 博信, 坪田 圭司, 堀江 孝史
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2011 年 37 巻 3 号 p. 229-234
    発行日: 2011/05/20
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル 認証あり
    乾き材料品質の一例として多孔平板内のバインダー偏析を取り上げ,伝導乾燥速度曲線を利用した品質の推定法の可能性に関する調査研究を行った.多孔体の対流乾燥におけるバインダー偏析の推定に対して筆者らが提案した既往の簡易モデルを,多孔平板の伝導乾燥に対して応用し拡張モデルを提案した.拡張モデルに実測乾燥速度曲線を代入して得た計算結果を,ポリビニルアルコール水溶液をバインダー溶液として用いた筆者らによる既往の実験結果と比較検討したところ,両結果の一致は概ね良好だった.
    限定された条件下ながら実験結果を再現できる拡張モデルの提案に成功したことから,伝導乾燥速度曲線を利用したバインダー偏析の推定法に関して今後の展開に対する可能性が示唆されたとともに,乾燥装置設計に不可欠である乾燥速度曲線を利用した品質データ推定の可能性に関する一例でもあるだろう.
  • 今駒 博信, 坪田 圭司, 堀江 孝史
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2011 年 37 巻 3 号 p. 235-240
    発行日: 2011/05/20
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,乾燥収縮を伴わない多孔体の対流乾燥におけるバインダー偏析を研究対象として,既往のモデルの概念を拡張することで,新たに溶液中拡散を考慮したバインダー偏析モデルを提案した.このモデルによる計算の結果,既往のモデルで導入された溶液中拡散現象を無視するという仮定は,そのモデルの検証に用いられた系に対して十分妥当だったことが定量的に示された.また,溶液中拡散はバインダー偏析を緩和した.さらに,本研究で提案したモデルによるバインダー偏析の推定は,乾燥速度曲線が既知のときのみ有効であり,未知の場合には,本研究で提案した溶液拡散パラメータを用いることで,拡散現象が無視可能な範囲を特定できることが判明した.
  • 山木 雄大, 鈴木 泰彦, 松田 圭悟, 宍戸 昌広, 高橋 幸司, 中岩 勝
    原稿種別: ノート
    専門分野: 分離工学
    2011 年 37 巻 3 号 p. 241-245
    発行日: 2011/05/20
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル 認証あり
    内部熱交換技術を適用したバッチ蒸留プロセスについて,モデリングを行い,ベンゼン–トルエン2成分系分離のシミュレーションを行った.計算には汎用プロセスシミュレータAspen Plus Dynamics®を用い,全還流および抜き出し運転を対象に,圧縮比と還流比に対するエネルギー消費量および運転時間について検討を行った.その結果,セミバッチHIDiCでは他のシステムと比して小さな還流比で抜き出し運転が行え,これによりプロセス時間の短縮ならびに省エネルギー化が可能であることが明らかになった.
  • 入谷 英司, 片桐 誠之, 佐野 泰之
    原稿種別: ノート
    専門分野: 分離工学
    2011 年 37 巻 3 号 p. 246-250
    発行日: 2011/05/20
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル 認証あり
    PACl(ポリ塩化アルミニウム)で凝集処理したフミン酸溶液の精密濾過の性能を,濾過速度の逆数と単位膜面積あたりの濾液量との関係を表す実験結果に基づいて決定した濾過ケークの平均ケーク比抵抗αavによって評価した.pH 5では,PAClを過剰に添加すると,凝集フロックが再分散してαavは顕著に増大した.シリンジフィルターによるフミン酸の初期透過率の実験データに基づき,フロックの再分散によって生じたサブミクロン粒子量の増加が,αavの増大を引き起こすものと推察された.このことは,シリンジフィルター試験で測定した初期透過率が,凝集・膜濾過特性の簡易評価に利用できることを示す.また,pH 7での凝集操作やベントナイトの添加を行うと,凝集フロックが再分散しないPACl添加濃度域が拡がることによって,精密濾過性能を改善することができた.
熱工学
  • 安村 光太郎, 齋藤 泰洋, 庄子 正和, 松下 洋介, 青木 秀之, 三浦 隆利, 小笠原 慎, 大黒 正敏, 城田 農, 稲村 隆夫
    原稿種別: 報文
    専門分野: 熱工学
    2011 年 37 巻 3 号 p. 251-260
    発行日: 2011/05/20
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    塗着効率を低下させる重要因子を明らかにすることを目的に,高速回転ベルカップ塗装機を対象とした噴霧流解析を実施した.その際,最終的に被塗装面へ塗着する噴霧と塗着しない噴霧の粒子挙動の差異を詳細に比較することで,内部再循環流およびゴーストが塗着効率に及ぼす影響を検討した.数値解析には,Euler–Lagrange法を使用し,乱流モデルに標準型κ–ε二方程式モデルを用いた.内部再循環流について検討した結果,内部再循環流は粒子径の小さな噴霧粒子を巻き込みやすいことを確認した.内部再循環領域内において,中心軸に近い位置に存在する噴霧粒子は,最終的に被塗装面へ塗着しにくいことを確認した.ゴーストについて検討した結果,ゴーストはベルカップ周端から半径方向の外側に飛び出した粒子径の大きな噴霧粒子が,半径方向の内側に戻ることによって形成することを確認した.ゴースト内において,より内側に戻る噴霧粒子は,最終的に塗装面へ塗着しやすいことを確認した.以上の結果より,粒子径の小さな噴霧粒子に対しては内部再循環流が,粒子径の大きな噴霧粒子に対してはゴーストが塗着効率に関する重要因子であることを明らかにした.また,内部再循環流またはゴースト内における噴霧粒子の位置が最終的な塗着の可否に対して重要であることを示した.
  • ―酢酸ナトリウム3水和物―
    稲垣 照美, 北澤 元気
    原稿種別: 報文
    専門分野: 熱工学
    2011 年 37 巻 3 号 p. 261-270
    発行日: 2011/05/20
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル 認証あり
    本研究は,相変化蓄熱媒体の一つである酢酸ナトリウム3水和物の熱物性を評価し,その熱輸送プロセスとしての水平密閉矩形容器内自然対流の伝熱特性を実験的に検討したものである.ここでは,酢酸ナトリウム3水和物の熱特性値に対する温度依存性や過冷却現象などを評価し,実使用形態に合わせた熱輸送プロセスに必要不可欠な伝熱データベースを提示した.また,実測した熱物性値に基づいて水平密閉矩形容器内自然対流の熱伝達率を再整理することで,従来から提案されている伝熱相関式と比較・検証しながら液相状態下の自然対流の伝熱特性を解明した.その結果,酢酸ナトリウム3水和物の熱物性値に対する温度依存性を解明するとともに,その過冷却現象には冷却速度の影響を受けた2つの特異な過冷却現象が存在することを明らかにした.また,本研究で新たに実測した熱物性値を適用することにより,液相状態下の自然対流熱伝達は,先に提案されている水平密閉矩形容器内自然対流熱伝達に関する伝熱相関式と良好な一致を示すことが明らかになった.
生物化学工学,食品工学,医用工学
  • 上岡 秀嗣, 古水 雄志, 後藤 浩一, 上岡 龍一
    原稿種別: 報文
    専門分野: 生物化学工学,食品工学,医用工学
    2011 年 37 巻 3 号 p. 271-276
    発行日: 2011/05/20
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル 認証あり
    温州みかんの果実と果汁より溶媒抽出した成分を90 mol% DMPC/10 mol% Tween 80ハイブリッドリポソームに含有し,ヒト肝臓がん(HuH-7)細胞およびヒト胃がん(MKN-45)細胞に対する増殖抑制効果をin vitroで検討した.高極性溶媒抽出物では,果実および果汁ともに,抑制効果はほとんどみられず,MKN-45細胞に対して約20%の増殖抑制効果を示した.一方,低極性溶媒抽出物,とくに,石油エーテル抽出物とクロロホルム抽出物では顕著な効果が観測され,約60–80%の高い増殖抑制作用を示した.これらの結果から,温州みかんから得られた低極性溶媒抽出物に脂溶性の抗腫瘍成分が存在し,ハイブリッドリポソームに含有させることにより有効な制がん効果を示したと考えられる.
エネルギー
  • 山本 剛, 桑原 卓也, 中曽 浩一, 山本 高久
    原稿種別: 報文
    専門分野: エネルギー
    2011 年 37 巻 3 号 p. 277-283
    発行日: 2011/05/20
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル 認証あり
    プロセスの高度化・複雑化に伴い高発熱化傾向にある産業デバイスの冷却方法として,水の相変化に伴う蒸発潜熱により大きな冷却効果が見込める微細粒子ミスト冷却が注目されている.そこで本研究では,微細粒子ミスト冷却を産業デバイスに応用するため,Euler–Lagrange法を用いた熱流動解析モデルを構築し,気相の流動,粒子の噴霧・蒸発挙動,ワーク材の冷却挙動について解析を行った.実験結果と解析結果の比較から,本モデルの妥当性を確認するとともに,微細粒子ミスト冷却の高熱流束冷却特性が示された.解析結果から,噴霧粒子の約50%がワーク材に衝突し,そのうち20–30%が蒸発した.また,ワーク材温度は微細粒子の衝突頻度が高い中心部においてより低下した.
環境
  • 牧 善朗, 芝田 隼次, 村山 憲弘
    原稿種別: 報文
    専門分野: 環境
    2011 年 37 巻 3 号 p. 284-288
    発行日: 2011/05/20
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル 認証あり
    非汚染土壌に重金属を添加することにより実験用汚染土壌を作成した.重金属として,電気・電子産業で部品,回路やはんだ付け材料などとして汚染源になりやすいPb,Cd,Cuを選んだ.キレート化剤にクエン酸およびL-グルタミン酸二酢酸ナトリウム塩を選定して,これらを単独および混合して用い,汚染土壌の浄化を検討した.キレート化剤を混合して用いることにより,より少ない量のキレート化剤で土壌浄化が可能であることを示した.ボールミルを用いて重金属の溶出試験を行った.ボールミル内での溶出反応は早く約15 minで平衡状態に達した.ボールミルを用いてキレート化剤で浄化し,浄化済みの土壌を排出し,水洗するまでのフローを作成した.このプロセスフローに従って汚染土壌の浄化を行った.重金属を高濃度に含む溶出液や水洗水の処理を検討した.重金属を含むキレート化剤廃液を硫化物沈殿法で処理すると,重金属を硫化物沈殿として除去することが可能であった.
feedback
Top