2011 年 37 巻 3 号 p. 271-276
温州みかんの果実と果汁より溶媒抽出した成分を90 mol% DMPC/10 mol% Tween 80ハイブリッドリポソームに含有し,ヒト肝臓がん(HuH-7)細胞およびヒト胃がん(MKN-45)細胞に対する増殖抑制効果をin vitroで検討した.高極性溶媒抽出物では,果実および果汁ともに,抑制効果はほとんどみられず,MKN-45細胞に対して約20%の増殖抑制効果を示した.一方,低極性溶媒抽出物,とくに,石油エーテル抽出物とクロロホルム抽出物では顕著な効果が観測され,約60–80%の高い増殖抑制作用を示した.これらの結果から,温州みかんから得られた低極性溶媒抽出物に脂溶性の抗腫瘍成分が存在し,ハイブリッドリポソームに含有させることにより有効な制がん効果を示したと考えられる.