変圧器や開閉器等,ガス絶縁機器に適用されるOリングについて,ガスシール性能の長期的信頼性を評価するため,クロロプレンOリングの加速劣化試験におけるゴム特性の変化を測定し,その劣化過程を考察した.加速劣化試験において,ゴム硬度の上昇および引張破断強度の低下と引張伸びの低下には,使用雰囲気中の酸素が強く影響し,さらにはOリングと酸素との接触面積の大きさと劣化速度に一次の相関性のあることが確認できた.これらの実験結果に基づいて,Oリングのガスシール性能を評価する直接的指標となる圧縮永久ひずみの経時的な増加について,スプリングとダッシュポットで表現される物理モデルを提案し,その挙動を考察した.Oリング劣化による圧縮永久ひずみの増加として初めに進行する物理的応力緩和過程については,スプリングとダッシュポットを直列に接続したMaxwellモデルでの変位により表した.次に進行するゴム中の残余架橋剤による新たな架橋形成にともなう硬化については,スプリング要素の追加を化学反応速度により表した.最終的にOリング寿命を決定する過程となる酸素による新たな架橋形成にともなう硬化については,ゴムへの酸素の浸透と拡散が支配的となる化学反応速度で表した.また,酸素有無の雰囲気の異なる3通りの条件での加速劣化試験において実測した,クロロプレンOリングの圧縮永久歪率データに対して,提案したモデルを適用することによって,Oリングの劣化を表現できていることを確認した.