化学工学論文集
Online ISSN : 1349-9203
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47 巻, 3 号
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編集ノート
移動現象,流体工学
  • 鈴川 一己, 友田 一基, 宮﨑 達史, 河村 祐亮, 金井 由悟
    原稿種別: 報文
    2021 年47 巻3 号 p. 57-63
    発行日: 2021/05/20
    公開日: 2021/05/20
    ジャーナル 認証あり

    代表的な自己相似フラクタル形状であるコッホ曲線を羽根に組み込んだ種々の撹拌翼を用い,標準邪魔板条件の下で乱流域における動力特性を調査した.基本翼として6枚ラシュトンタービン翼および4枚平パドル翼を採用した.基本翼とコッホ曲線を組み込んだフラクタル翼の羽根形状を流体力学的に評価・比較するため,羽根の抗力係数と単純な速度分布モデルの比例係数から成る撹拌抗力係数CDMを新たな簡易指標として提案した.これにより動力数NPは羽根枚数npと羽根の投影面積・回転モーメント効果を表す無次元羽根面積因子Sf*を用いてNP=4π3 np CDM Sf*と表せる.測定の結果,コッホ型フラクタル翼の動力数は6枚ラシュトン翼系では基本翼の40–97%, 4枚平パドル翼系では基本翼の46–87%の広い範囲で値を変化させるのに対し,フラクタル翼の撹拌抗力係数は基本翼の86–97%の間の狭い範囲の値を取った.特に,一部のフラクタル翼は縮小写像回数が増加すると撹拌抗力係数が低下することから,コッホ曲線による抵抗低減効果を確認した.撹拌抗力係数は動力数から容易に導出可能であり,撹拌槽という特殊な回転流れ場における流体抵抗係数として基本的かつ実用的な指標になると考える.

生物化学工学,食品工学,医用工学
  • 吉岡 慶太郎, 山下 春来, 藤谷 将也, 加藤 竜司, 清水 一憲, 本多 裕之
    原稿種別: 報文
    2021 年47 巻3 号 p. 64-68
    発行日: 2021/05/20
    公開日: 2021/05/20
    ジャーナル 認証あり

    遊離脂肪酸受容体(FFAR)1を活性化できる食品由来ペプチドの探索を目標とし,ペプチドの構造から物性値を取得し,既存のFFAR1アゴニストとの分子構造相同性を階層的クラスタリングで解析した.3 merから6 merまでのペプチドライブラリーに対して分子の物性パラメータが相関するペプチドを探索した結果,相関係数が高い12種の6 merペプチドを見出した.これらのペプチドを実際にFmoc固相合成法で合成し,FFAR1結合による活性化が評価できるTGFα切断アッセイを行ったところ,活性の高い2種のペプチド,GCGGSS, GASGCCを発見した.これらの活性は既往のアゴニストGW9508の約1/5であったが,天然アミノ酸からなるペプチドでFFAR1を活性化するペプチドは我々の研究が初めてである.

材料工学,界面現象
  • 皆川 忠郎, 畑中 康道, 小栁 洋介, 沖田 愛利香, 安田 昌弘
    原稿種別: 報文
    2021 年47 巻3 号 p. 69-75
    発行日: 2021/05/20
    公開日: 2021/05/20
    ジャーナル 認証あり

    変圧器や開閉器等,ガス絶縁機器に適用されるOリングについて,ガスシール性能の長期的信頼性を評価するため,クロロプレンOリングの加速劣化試験におけるゴム特性の変化を測定し,その劣化過程を考察した.加速劣化試験において,ゴム硬度の上昇および引張破断強度の低下と引張伸びの低下には,使用雰囲気中の酸素が強く影響し,さらにはOリングと酸素との接触面積の大きさと劣化速度に一次の相関性のあることが確認できた.これらの実験結果に基づいて,Oリングのガスシール性能を評価する直接的指標となる圧縮永久ひずみの経時的な増加について,スプリングとダッシュポットで表現される物理モデルを提案し,その挙動を考察した.Oリング劣化による圧縮永久ひずみの増加として初めに進行する物理的応力緩和過程については,スプリングとダッシュポットを直列に接続したMaxwellモデルでの変位により表した.次に進行するゴム中の残余架橋剤による新たな架橋形成にともなう硬化については,スプリング要素の追加を化学反応速度により表した.最終的にOリング寿命を決定する過程となる酸素による新たな架橋形成にともなう硬化については,ゴムへの酸素の浸透と拡散が支配的となる化学反応速度で表した.また,酸素有無の雰囲気の異なる3通りの条件での加速劣化試験において実測した,クロロプレンOリングの圧縮永久歪率データに対して,提案したモデルを適用することによって,Oリングの劣化を表現できていることを確認した.

エネルギー
  • 松岡 世里子, 加藤 悟, 吉宗 航
    原稿種別: 報文
    2021 年47 巻3 号 p. 76-84
    発行日: 2021/05/20
    公開日: 2021/05/20
    ジャーナル 認証あり

    固体高分子形燃料電池に用いられる多孔質部材である撥水層(MPL)の構造を,走査電子顕微鏡(SEM)で解析するための測定用試料作製法を提案した.MPLが有する細孔をエポキシ樹脂で充填し,その樹脂を四酸化オスミウム水溶液で電子染色することで,画像処理による細孔の抽出が容易な高コントラストのSEM画像の取得を可能にした.このとき電子染色処理を24 h以上行うことで,少なくとも5 µmの深さまで電子染色できることを確認した.細孔抽出する画像処理法を提案し,複数枚のSEM像から,空隙率および細孔径分布を解析した.測定箇所毎の細孔径・空隙率のばらつきを統計解析することにより,平均情報を得るために必要なSEM像の枚数について検討した.また,測定箇所毎の細孔構造のばらつきの原因が,MPLを構成する粒子の凝集状態の分布ではなく,画像中の大細孔の量によるものであることが明らかになった.

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