2021 年 47 巻 3 号 p. 57-63
代表的な自己相似フラクタル形状であるコッホ曲線を羽根に組み込んだ種々の撹拌翼を用い,標準邪魔板条件の下で乱流域における動力特性を調査した.基本翼として6枚ラシュトンタービン翼および4枚平パドル翼を採用した.基本翼とコッホ曲線を組み込んだフラクタル翼の羽根形状を流体力学的に評価・比較するため,羽根の抗力係数と単純な速度分布モデルの比例係数から成る撹拌抗力係数CDMを新たな簡易指標として提案した.これにより動力数NPは羽根枚数npと羽根の投影面積・回転モーメント効果を表す無次元羽根面積因子Sf*を用いてNP=4π3 np CDM Sf*と表せる.測定の結果,コッホ型フラクタル翼の動力数は6枚ラシュトン翼系では基本翼の40–97%, 4枚平パドル翼系では基本翼の46–87%の広い範囲で値を変化させるのに対し,フラクタル翼の撹拌抗力係数は基本翼の86–97%の間の狭い範囲の値を取った.特に,一部のフラクタル翼は縮小写像回数が増加すると撹拌抗力係数が低下することから,コッホ曲線による抵抗低減効果を確認した.撹拌抗力係数は動力数から容易に導出可能であり,撹拌槽という特殊な回転流れ場における流体抵抗係数として基本的かつ実用的な指標になると考える.