1987 年 13 巻 4 号 p. 412-420
乳化型液膜操作を実用プロセスとして確立するには, 解決すべき多くの問題が存在する.とりわけ, 油相中の担体, 添加剤および界面活性剤の組合せとそれらの濃度, さらに内外両水相の添加剤の選定とその濃度などの条件設定が重要となる.
クロムの抽出試薬として有効とされる第三アミンを担体とする乳化型液膜では, 油相に添加される界面活性剤の作用によって, 油相中でゲル状のクロム会合錯体が形成する.このため乳化液滴はクロムの抽出機能を有するが, 第三アミンは輸送担体としての機能をほとんど失い, クロムの濃縮回収を実現できない.2・エチルヘキシル・アルコールとポリアミンとを含むケロシン溶液を液膜とし, 水酸化リチウム水溶液を内水相とする乳化液を用いると, 酸性水溶液に含まれる微量クロムを内水相に濃縮分離できる.さらにこの油相を数回繰り返し再使用しても液膜操作に支障のないことを確認した.