1993 年 19 巻 6 号 p. 1006-1014
石炭とフェノール樹脂の混合物あるいはフェノール樹脂に4種類の石炭系ピッチ, アントラセン, ジヒドロアントラセン, アセナフチレンを混合してから炭化する方法によって分子ふるい炭素 (MSC) を製造した.石炭, フェノール樹脂, 有機物の混合比や炭化温度を変化させることにより細孔分布を0.37~0.44nmの範囲で精度良く制御できた.このMSCの適用例として, (1) プロピレン-プロパン, (2) 1-ブテン-イソブチレン, (3) 二酸化炭素-メタンの分離の可能性を平衡吸着量と吸着速度の観点から検討した.その結果, (1) ~ (3) のそれぞれの系について, 前者のガスを吸着するが, 後者のガスを吸着しないMSCを製造できた.また, 二酸化炭素の拡散速度がメタンの約40倍となるMSCを製造できた.MSCのガス分離性能は分子径, 分子の形状と平均細孔径, 細孔分布のシャープさでほぼ整理できた.