1993 年 19 巻 6 号 p. 1023-1030
表題氷蓄熱は蓄熱材として吸水性高分子ゲルを用いる.適当な排気手段によりゲル表面から水蒸気を蒸発させ, この蒸発熱をゲル中の残余の水の凝固熱として蓄える方式である.実用化の第1の鍵は大排気容量, 高効率の真空圧縮機の開発にあるが, 一方, 氷生成効率を高めるためには極力ゲルの過冷却を抑え, 氷点 (0℃) に近い温度で製氷することが重要である.本報では (1) ダイヤフラムポンプ採用による実験装置の約20倍のスケールアップに伴う, 蒸発速度式の取扱いについて検討し, 実用的には速度はゲル温度の水蒸気圧に比例するとして扱えること, また, (2) ゲルの過冷却温度と蓄熱効率の関係から, 過冷却は可能な限り抑えることが望ましいことを示した.さらに, (3) 新たに生物起源の無公害有機氷核物質に着目し, AgIと同様の過冷却解消効果があることを示した.