1995 年 21 巻 6 号 p. 1147-1153
ヘテロポリ酸 (H3PW12O40) をアルカリで部分イオン交換して不溶性触媒を得た.強い酸性質を応用する目的で無水安息香酸によるトルエンのフリーデルクラフツ型アシル化の液相反応 (回分式, 383K) を行った.セシウムで部分的にイオン交換し573Kで焼成したH0.5Cs2.5PW12O40はpKa=-8.2以上の高い酸強度を有し, もっとも高い活性を示した.反応は60%前後のフェニルトリルケトン (PTK) の最終収率で停止したが, 固体超強酸 (H2SO4/ZrO2) に匹敵する活性を示した.しかし, 触媒を回収した上で, 再度反応を行ったところ, 反応は再び進行し, 不可逆的な失活ではないことがわかった.反応が途中で停止する原因について検討し, 触媒上で活性化された無水安息香酸中間体と生成物ケトンとの反応による反応物の消失, 反応系内に不純物として存在する水, 生成物ケトンの触媒への吸着などの要因が複合していることを明かにした.副生成物を同定して反応経路を推定し, これに基づいた反応速度式を提案した.