1997 年 23 巻 1 号 p. 53-58
ニコチンの経皮吸収治療システムの基礎研究を目的として, 人工脂質であるビスオレイルスルホコハク酸及びビスオレイルリン酸を用いてキトサンとのポリイオンコンプレックス形成によりコーティングしたニコチン内包キトサン微粒子を合成し, この微粒子からのニコチンの放出挙動をFranzセルを用いて測定した.ニコチンの放出は, 人工脂質のコーティングによって著しく抑制され, かつ, 長期間, 広放出率範囲にわたって一定速度で行うことが可能であった.加えて, ニコチンの放出速度が34~37℃付近で急激に変化する挙動が観察された.これはコーティングした人工脂質の相転移挙動に起因するによるものであると推察される.これらの結果より, この微粒子を経皮吸収治療用パッチへ応用する場合, 皮膚に貼ると温度上昇によって, ニコチンが長期間一定速度で放出でき, 一方, それ以下の低温では, ほとんど放出されないため保存に適していることが明らかになった.