化学工学論文集
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東アジアでの大気汚染物質の長距離輸送に関する数値シミュレーション
姜 錫在植田 洋匡
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1997 年 23 巻 6 号 p. 850-860

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抄録

東アジアの大気質は, 化石燃料の消費の急増や高い経済成長率と人口増加によって急激に悪化することが懸念される.春の晴れた日には, 大規模な風系が発達しアジア大陸から太平洋へ向かって汚染物質が長距離にわたって輸送されることがよくある.
本研究は, この地域での大気汚染物質の濃度変化を知るために輸送・化学・沈着のオイラー型数値モデルを用いて春の非降雨の高濃度発生時に対してシミュレーションを行った.このような高濃度発生時には, 大陸から北西太平洋へ向かう長距離輸送の証である黄砂現象が発生していた.一方, 日・中・韓の三国共同の野外観測を1993年から3年間3回にわたって実施し, 煙台, 済州島, 鹿児島の3ヵ所で大気汚染物質の濃度を測定した.
まず, 東アジア地域における野外観測値やモニタリングデータとシミュレーション結果との詳細な比較から, 本数値モデルの妥当性が検証された.また, 汚染物質の高濃度汚染ベルトが中国東部地域から韓国南部, 西日本地域にかけて鮮明に形成されていることもわかった.特に, このベルト地域での対流圏オゾン濃度は非常に高く, 日本や北西太平洋の高濃度オゾンは大陸からの長距離輸送によってもたされることが明らかになった.

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