抄録
高等学校の化学の教科書が改訂され, 実験や観察を通した化学的思考の重視が謳われている。「化学II」の教科書では, 「なぜ」「どのように」という観点から学習を深める旨の序文がこぞって見受けられる。18世紀に始まり19世紀半ばに完成する「熱力学」, 市民権を得て久しい「分子軌道論」, あるいは「分子動力学」の概念や考え方は今日の化学の重要な基盤のひとつであり, 化学的思考を大切にする教科書に反映される必要がある。こうした立場から, 「化学II」の教科書に登場する「化学反応」に関する今日的課題を指摘し検討をくわえる。