2016 年 64 巻 7 号 p. 340-343
磁気物性から多様な環境問題に取り組む環境磁気学は,近年,有用性が広く報告されている。ほとんどの物質に含まれる磁性鉱物をトレーサーとし,その含有量や種類と粒径をもとに,時空間分布を調べることで,環境場の変化や環境物質の移動等を能率良く推定できる。また,強磁性鉱物が周囲の磁場を残留磁化に記録できる性質を用いると,過去の地磁気も含む磁場の研究が行える。本稿では,富山県の,3,000m級の立山を始めとする山岳地域や水深1,000mを超える富山湾という変化に富む自然環境で実施した環境磁気研究を紹介する。特に報告例が少ない自動車が発生源となる土壌汚染に関する立山地域での研究と,富山・北陸に特異な雷の研究について概説する。