2018 年 66 巻 11 号 p. 520-523
日本の硫酸工業は明治初期の貨幣の金属洗浄用から始まり,化学肥料工業の台頭,合成繊維の量産化,無機化学製品の伸長による硫酸需要の増大に合わせて供給体制を確立してきた。当初の硫酸製造法は単体硫黄,硫化鉱を原料とした硝酸式(鉛室法)であったが,非鉄金属製錬ガス,石油精製の回収硫黄およびコークス炉ガス等へと原料が変化し,高濃度,高純度の硫酸を製造する接触式へ変遷してきた。現在,世界では2億7千万t/年以上の硫酸が製造され,今後さらに需給拡大の見通しである。本稿ではその興味深い硫酸工業について紹介する。