日本東洋医学雑誌
Online ISSN : 1882-756X
Print ISSN : 0287-4857
ISSN-L : 0287-4857
臨床報告
動静脈瘻による多発性難治性両側下腿皮膚潰瘍に対し和漢薬治療が奏効した一例
地野 充時石田 厚関矢 信康大野 賢二平崎 能郎笠原 裕司並木 隆雄宮崎 勝寺澤 捷年
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 61 巻 3 号 p. 325-330

詳細
抄録

下腿皮膚潰瘍の原因の一つとして動静脈瘻が知られている。動静脈瘻では患部の静脈圧上昇による末梢組織への動脈血流の低下と静脈血の鬱滞を来し,循環障害による冷感,浮腫,疼痛,皮膚炎,皮膚潰瘍などが生じることがある。症例は32歳女性。1999年頃から両下腿の浮腫,難治性皮膚潰瘍,疼痛が出現。精査により2003年に両下肢動静脈瘻と診断。両下腿の局所療法,鎮痛剤等の対症療法で治療されていたが症状が改善しないため2006年8月当科紹介初診。初診時に当帰芍薬散エキスを投与し,6週間の内服にて疼痛は軽減。その後,全身倦怠感等の気虚の症状に対し黄耆建中湯エキスを,寒冷による疼痛増悪の訴えに対し修治附子末を併用。これにより半年後には難治性皮膚潰瘍が縮小し,鎮痛剤も不要となった。我々が検索した範囲では本症の和漢薬を用いた治療報告は初めてである。本症の治療として和漢薬治療が選択肢となることが示唆された。

著者関連情報
© 2010 一般社団法人 日本東洋医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top