日本東洋医学雑誌
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臨床報告
低血圧症を伴う慢性心不全の水分管理に五苓散が有効であった一症例
松井 龍吉山口 拓也小林 祥泰長井 篤山口 修平
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2012 年 63 巻 3 号 p. 185-190

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抄録

低血圧症を伴う慢性心不全の急性増悪症例に対して,五苓散を投与したところ心不全症状の改善と,その後の水分管理が良好に保てた症例を経験した。症例は91歳女性。僧帽弁閉鎖不全,大動脈弁閉鎖不全,心房細動および洞不全症候群によるペースメーカ植込み術を施行され外来にて加療中,しばしば心不全の増悪のため入退院を繰り返していた。全身の浮腫,胸水貯留など,心不全症状の悪化により再入院となるが,血圧は以前から80/50mmHg 前後と低値であり,利尿薬(フロセミド)を少量追加するが,経過中に脳梗塞を合併し,その後も血圧が低く,利尿薬のさらなる追加が難しい状況であった。このためそれまでの内服薬を変更することなく,口渇,尿量減少などを目標に五苓散を追加したところ,血圧に影響を与えることなく,尿量の増加とともに諸症状の改善と胸水の消失が認められた。
五苓散は代表的な利水剤の1つである。本症例において血圧に影響を与えることなく,利水としての水分調節作用を示したと考えられた。

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© 2012 一般社団法人 日本東洋医学会
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