日本東洋医学雑誌
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論説
宋以前の大黄牡丹皮湯の使用目標についての「小便」を中心とした検討
小池 宙堀場 裕子渡辺 賢治
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2020 年 71 巻 2 号 p. 154-161

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抄録

[緒言]大黄牡丹皮湯の『金匱要略』の条文には「小便自調」と記されているが,現代日本漢方では「小便不利」を目標に使用する傾向がある。その違いを検討するために古典における大黄牡丹皮湯使用時の,「小便」や「淋」や「腸癰」を中心とした使用目標について調査した。[方法]現存する宋改以前または宋改時の古医書に存在する大黄牡丹皮湯に関連する記述を検索し,比較・検討した。[結果]『金匱要略』系の書は「小便自調」と記していたが,それ以外の書は『諸病源候論』の「小便数似淋」のように頻尿になると記していた。また『金匱要略』系と『医心方』以外の書には,『諸病源候論』の「小便或難」のように排尿しにくくなることもあるという記載もあった。[考察]宋代以前の複数の古医書を検討すると,大黄牡丹皮湯が有効な症例の多くは頻尿となるが,一部の症例では尿が出にくくなることもあると書かれていた。

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© 2020 一般社団法人 日本東洋医学会
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