女神散は,のぼせやめまいを目標として女性の「血の道症」に使用されるが,香附子・檳榔子等,気うつ(=気滞)を改善する生薬を複数含むことから,現代的にはうつ病エピソードに対して応用可能な処方であると考えられる。今回,産後症例,月経困難症・過多月経を伴う症例,及び,閉経後症例の,計5例の軽症~中等症うつ病エピソードに対し女神散が奏効した経験を得た。うつ病エピソードの特性上,気うつ・気虚が基本病態であったとしても,そこに,顔面紅潮や手掌紅斑,熱感・のぼせ等の熱候を伴う瘀血の所見が認められ,さらに,動悸や臍上悸を伴う点が共通した特徴であった。女神散の元とされる「安栄湯」は,合戦での刀傷後の心身状態に使用されていたことから,産後や過多月経といった出血性の身体的条件がある女性に,一定期間のストレスが重なり発症したうつ病エピソードの中に,現代的な女神散の適応を探ってゆくことができるのではないかと考察を加えた。