1996 年 46 巻 4 号 p. 581-590
小児鍼は, 成人に対する刺鍼法とは異なり, 軽微な皮膚接触刺激を主とした治療法であり, 関西地方では江戸時代より盛んに小児鍼が行なわれ現在に至っている。
そこで, この小児鍼が受け入れられている社会的背景を知り, 受療児の主訴ならびに関連症状を把握することを目的に実施した調査について報告する。
本学附属鍼灸治療所の小児鍼受療児は, 大半 (88.5%) が半径15km以内に居住する近隣の患者であった。
小児鍼受療児の動機は, 夜泣きや大声・奇声をあげるなど, 幼児期にしばしばみられる神経性習癖であった。
小児鍼受療の動機として祖父母からの紹介が最も多かったことなどから, 小児鍼受療の背景として地域的な慣習の存在が示唆された。