日本東洋医学雑誌
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反回神経麻痺により繰り返される下気道感染に対し清肺湯を試みた2例
萬谷 直樹小尾 龍右後藤 博三伊藤 隆寺澤 捷年
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1999 年 50 巻 3 号 p. 455-460

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抄録

反回神経麻痺により繰り返される下気道感染の2例に, 清肺湯が一定の効果を示した。症例1は50歳男性。1970年に頸部腫瘍で手術と放射線治療を受けた。以後嗄声と摂食時のむせが出現し, 1992年からは年に4, 5回下気道感染をおこすようになった。1995年5月肺炎で入院し, 以後の2ヵ月間に3回肺炎を繰り返した。清肺湯エキスを開始してからは1年3ヵ月間寛解が得られた。観察期間3年7ヵ月間での再燃は3回で, うち2回は気管支炎であった。症例2は76歳男性。1984年左上葉肺癌で肺切除術と放射線療法をうけた。以後嗄声, 摂食時のむせ, 疾と咳が出現し, 年に5~6回増悪して治療を受けるようになった。1997年5月と翌年3月肺炎で入院。和漢薬治療を求め4月初診。清肺湯エキスにより自覚症状が改善し, 8ヵ月半の寛解が得られた。原典の万病回春には「声唖」の指示があり, 方剤を選択する際に嗄声が大きな目標となった。

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