日本東洋医学雑誌
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酒煎した当帰四逆加呉茱萸生姜湯加烏頭の使用経験 -清酒がアコニチン量に及ぼす影響について-
長坂 和彦引網 宏彰名取 通夫川崎 武志寺澤 捷年
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2001 年 52 巻 1 号 p. 9-15

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抄録

今回, 当帰四逆加呉茱萸生姜湯加附子を酒煎することを指示し, 良好な結果を得た症例と中毒症状を来した各一症例を経験したので報告する。
症例1は46歳, 女性。夜間寒さで目覚め, 一度目が覚めるとストーブにあたりながらドライヤーで肩から腕を温めないと眠れなかった。そこで, 酒煎 (水:酒=1:1で煎じる) を指示したところ, 冷え症が改善して夜間の覚醒がなくなった。症例2は65歳, 男性。2年前より多関節痛, 腰痛があり, 冷え症も強くなってきたため受診した。当帰四逆加呉茱萸生姜湯加烏頭で足が温まるようになった。さらなる効果を期待して, 酒煎を指示したところ, 内服25分後に舌のしびれを自覚した。附子中毒と考え服用を中止した。
清酒は性大熱にして, 陽気を助ける作用がある。これは附子の作用と同じである。当初は, 附子と清酒中のアルコールの相乗効果で作用が高まると予想した。しかし, 清酒と同じアルコール濃度のエタノール液で煎じた場合は効果は高まらず, 清酒による煎液のpHの低下が主因であった。

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