日本東洋医学雑誌
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52 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 中野 厚
    2001 年 52 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    卵巣摘除後骨減少症に対する紅参の作用を検討するため, 8週齢の Wistar 系雌性ラットを, 偽手術 (Sham) 群, 卵巣摘除対照 (Control) 群, 卵巣摘除薬物投与 (RG) 群に分け, Sham, Control 群には水道水を, RG群には紅参水溶液0.1g/kg/dayを, 週5日12週間, 強制経口投与した。その結果 (1) Control 群の骨量は Sham 群に比べ, 有意 (P<0.01) の低値を示したが, RG群の骨量は Control 群に比べ, 有意 (P<0.05) の高値を示した。(2) Control 群の小腸絨毛の高さは Sham 群に比べ, 有意 (P<0.05) の低値を示したが, RG群では Control 群に比べ高値の傾向 (P<0.1) を示した。また Control 群の小腸絨毛陰窩の深さは Sham 群に比べ, 有意の差はなかったが, RG群では Control 群に比べ有意 (P<0.05) の低値を示した。さらに Control 群における Lee & Tonar の分類IIIに属する絨毛の発現頻度は Sham 群に比べ, 有意に高値であったが, 紅参はこの発現を有意に抑制した。よって紅参は卵巣摘除による骨減少症を抑制する作用を有することが示され, その機序として卵巣摘除後小腸絨毛萎縮抑制作用の関与が考えられた。
  • 長坂 和彦, 引網 宏彰, 名取 通夫, 川崎 武志, 寺澤 捷年
    2001 年 52 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    今回, 当帰四逆加呉茱萸生姜湯加附子を酒煎することを指示し, 良好な結果を得た症例と中毒症状を来した各一症例を経験したので報告する。
    症例1は46歳, 女性。夜間寒さで目覚め, 一度目が覚めるとストーブにあたりながらドライヤーで肩から腕を温めないと眠れなかった。そこで, 酒煎 (水:酒=1:1で煎じる) を指示したところ, 冷え症が改善して夜間の覚醒がなくなった。症例2は65歳, 男性。2年前より多関節痛, 腰痛があり, 冷え症も強くなってきたため受診した。当帰四逆加呉茱萸生姜湯加烏頭で足が温まるようになった。さらなる効果を期待して, 酒煎を指示したところ, 内服25分後に舌のしびれを自覚した。附子中毒と考え服用を中止した。
    清酒は性大熱にして, 陽気を助ける作用がある。これは附子の作用と同じである。当初は, 附子と清酒中のアルコールの相乗効果で作用が高まると予想した。しかし, 清酒と同じアルコール濃度のエタノール液で煎じた場合は効果は高まらず, 清酒による煎液のpHの低下が主因であった。
  • 山田 和男, 神庭 重信, 大西 公夫, 水島 広子, 力石 千香代, 福澤 素子, 村田 高明, 寺師 睦宗, 浅井 昌弘
    2001 年 52 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    現代医学的な血液生化学検査や精神症状評価などの結果より,「胸脇苦満」を分析しようと試みた。
    120例 (男性23例, 女性97例, 平均年齢42.4±16.2歳) を対象として, 胸脇苦満の程度と有無の評価, 血液生化学検査, Zung の Self Depression Scale (SDS), the Subjective Well-being Inventory (SUBI) を行った。
    93例 (77.5%) において, 左右いずれかもしくは左右ともに胸脇苦満を認めた。右側の胸脇苦満の「有」群と「無」群との間では, 血中クレアチニン値とSUBIの因子11 (人生に対する失望感) とで有意差を認めた。また, 左側の胸脇苦満の「有」群と「無」群との問では, SUBIの因子9 (身体的不健康感) と因子11とで有意差を認めた。
    以上の結果より, 強いストレッサー下にある症例ほど胸脇苦満を呈しやすいという結果が導き出された。
  • 片寄 大, 白土 邦男
    2001 年 52 巻 1 号 p. 25-38
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    循環器疾患の危険因子としての怒りを治療目標とする, 柴胡を含む医療用漢方製剤は循環器疾患の予防および制御に有用である可能性があるが, その循環器外来におけるその適用は確立されていない。そこで当科循環器外来で, 柴胡を含む医療用漢方製剤として使用頻度の高かった柴胡加竜骨牡蛎湯が投与された9名 (年齢44±13歳〉mean±SD〈 男性3名, 女性6名) について, 治療効果を解析した。柴胡加竜骨牡蛎湯使用9名中7名有効で有効率は78%であった。柴胡加竜骨牡蛎湯は上室性期外収縮, 心因性咳嗽, 高血圧, 心臓神経症などの患者における動悸, 胸部不快感, 咳嗽などの胸部症状および不眠に有効であった。柴胡加竜骨牡蛎湯使用例においては, 降圧効果, 抗不整脈効果, β遮断薬との比較しての安全性などが示された。以上, 肝関連方剤のなかで, 柴胡加竜骨牡蛎湯が動悸, 不眠の改善を介して, 循環器疾患の制御および予防に有用であると思われ, 循環器外来において使用が考慮されてよい薬剤と考えられた。
  • 貝沼 茂三郎, 今井 一彰, 古田 一史, 三潴 忠道, 伊藤 隆, 寺澤 捷年
    2001 年 52 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    我々は5例のC型慢性肝炎症例においてIFN製剤により疑似太陽病状態がおこることを報告した。その際, 麻黄湯や大青竜湯は, IFNにより誘発されるインフルエンザ様症状を軽快ないし消失せしめた。このことよりIFN製剤によるインフルエンザ様症状は太陽病実証モデルと成りうる可能性が示唆された。また脈候については5例とも悪寒が出現する時期において脈が沈弱を呈する時期が存在した。この結果から太陽病実証の極く初期には, 脈が沈弱となる時期が存在する可能性が示唆された。
  • 中城 基雄, 英保 武志, 久保 茂正, 長瀬 千秋
    2001 年 52 巻 1 号 p. 45-53
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    中医学の四診の中で, 脈診と並び重要な診察法として舌診が上げられる。一般に臨床的に舌色を記録する際, 従来の様な銀鉛カメラによる写真は, 客観性を有する手法の確立が難しく, また, 長期的な記録の保存性にも問題があった。
    そこで筆者らは, デジタルカメラを用いて, 画像補正用カラーチャートとコンピュータを併用した, 新しい画像補正の手法を考案し, 舌診の客観化を試みた。その結果, 補正後の出力画像は, 本来の舌の大きさを再現したばかりでなく, 実際の舌から測色した表色系の値とも近似させることが可能となり, 舌診の客観的評価に有用な手法であることが示唆された。
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