2002 年 53 巻 1-2 号 p. 11-35
20世紀にめざましい発展をとげた西洋医学は, 普遍性・客観的観察・論理性を重要視する医学体系である。西洋医学では身体や物質的側面が追求され, しばしば患者の心の問題やクオリティーオブライフが軽視されてしまう。一方, 東洋医学 (漢方医学) では心身一如の考え方にもとづき, 患者の訴えが重視される。今や西洋医学と東洋医学が融和した新しい医学の確立が求められている。インフルエンザ, シェーグレン症候群, 慢性腎不全, 慢性C型肝炎, 動脈硬化症に対する西洋医学と東洋医学の有用性と限界を示し, 両者が融和した新しい医学の可能性について述べた。さらに, 漢方薬の臨床効果の評価方法として, 証の理念を取り入れた形での二重盲検法やN-of-1デザインによる評価を紹介した。