日本東洋医学雑誌
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難治性胃潰瘍に伴う嘔吐に茯苓沢瀉湯が奏効した一例
小林 豊笠原 裕司喜多 敏明萬谷 直樹寺澤 捷年
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2002 年 53 巻 5 号 p. 521-527

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抄録

難治性胃潰瘍患者にみられた再発を繰り返す嘔吐に対し茯苓沢瀉湯が奏効した一例を経験した。症例は77歳女性。1997年2月, 躁鬱病の躁状態の悪化で入院中にタール便が出現し, 上部消化管内視鏡検査で胃潰瘍と診断。3年間にわたりH2受容体拮抗剤およびプロトンポンプ阻害薬で通常の治療を行なったが, 瘢痕期に至らないことから難治性胃潰瘍と考えられた。1998年2月,「朝食べたものを夕方吐いた」という訴えから, 嘔吐が胃反の病態によるものと考えられた。また, ひとたび嘔吐すると, 三日間は続けて嘔吐した。そこで, 嘔吐が出現時に茯苓沢瀉湯を服用させたところ, 嘔吐は一日で済んだ。同処方継続により嘔吐が出現しなくなり, 胃潰瘍は瘢痕期まで治癒した。 本症例において, 茯苓沢瀉湯が嘔吐発作を消失させたばかりでなく, 胃潰瘍治癒機転に好ましい作用を及ぼした可能性が示唆された。

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