2025 年 51 巻 2 号 p. 12-24
日本における脱炭素社会の支持度の規定因とその特徴を明らかにし,日本の心理的気候パラドックス解消のための気候コミュニケーションのあり方を探ることを目的に,日本とドイツにおいてアンケート調査を実施した。
分析の結果,日本では,気候変動対策として我慢を伴う身近な対策をイメージする傾向があること,日常対策の実践度や政策の支持度,脱炭素社会の支持度は,全体として日本よりドイツの方が高いが,暖房の温度を低めに設定するような取り組みの実践度は日本の方が高いこと,気候変動対策による負担感はドイツの方が強いことなどが明らかとなった。また,脱炭素社会の支持度にもっとも強く影響しているのは,危機感や責任感,金銭的な負担感ではなく,脱炭素社会を実現可能なものとして捉え展望を描けているか否かであることが明らかとなった。
日本における「脱炭素社会は非現実的」という捉え方が心理的障壁となり,脱炭素社会の支持度を下げている可能性がある。よって,気候変動の危機を伝え身近な個人レベルの環境配慮行動を促すコミュニケーションを行うよりも,脱炭素社会を実現可能なものとして認識し,展望を描けることを目指したコミュニケーションが重要だと言える。ここには,脱炭素社会づくりへの参加の機会の整備や,脱炭素社会をイメージできる建築物及び地域の実現などの広義のコミュニケーションを含む。