感染症学雑誌
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原著
重症心身障害児(者)病棟におけるヒト・メタニューモウイルス感染症の流行
メタニューモウイルス感染の病棟内流行
松田 俊二小村 珠喜塚越 博之野田 雅博木村 博一
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2012 年 86 巻 2 号 p. 109-114

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抄録

 重症心身障害児(者)病棟ではしばしば感染症の流行がみられるが,その半数は病原体不明である.今回,愛媛病院の 2 病棟で感染症が連続して流行し(A 病棟で 40 名中感染者 18 名,B 病棟で 60 名中感染者 14 名),感染者 4 名の咽頭と鼻腔ぬぐい液よりヒトメタニューモウイルスが検出された.ウイルス遺伝子の系統樹解析からすべての株がサブグループB2 に分類される株と判明し,同一ウイルスの感染流行が 2 病棟で連続して発生したと考えられた.患者 32 名の発熱期間は平均 5.3 日で,多くの症例で 38℃ 以上の高熱(78%)と湿性咳嗽(75%)がみられた.ウイルスの検出された 4 例ではリンパ球の減少と単球の増加がみられ,そのうちの 2 例では胸部X 線撮影で肺炎像の出現とともに CRP の上昇と発熱の遷延がみられた.平常時の血中抗メタニューモウイルス抗体は入院患者 151 名では 143 名(95%)が陽性であり,今回の発熱者の抗体価との間には有意差はみられず,血中抗体価に関わらず反復感染のありうることが示唆された.高熱が持続することや気管支炎・肺炎の併発が高頻度にみられることから,今後,重症心身障害児(者)病棟などの長期入院施設においてはヒトメタニューモウイルス感染症の流行にも注意し,早期発見と施設内流行の防止対策が必要と考えられる.

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© 2012 社団法人 日本感染症学会
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