感染症学雑誌
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原著
血液ならびに胆汁から分離された Klebsiella oxytoca 株の分子疫学解析と莢膜型および病原因子
K.oxytoca の莢膜型・病原因子
石原 由華八木 哲也望月 まり子太田 美智男
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2012 年 86 巻 2 号 p. 121-126

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抄録

Klebsiella oxytocaKlebsiella属において Klebsiella pneumoniaeに次いで多く分離され,日和見感染の重要な原因菌と考えられている.K. pneumoniaeの病原因子は莢膜が最も重要であり,各種線毛なども知られているが,K. oxytocaについては報告が無い.我々は 2009 年 5 月~11 月の間に名古屋大学医学部附属病院において収集された K. oxytoca 分離株のうち,血液,胆汁由来株全て (計 21 株)について,PCR による病原性遺伝子検索,莢膜型別ならびにパルスフィールドゲル電気泳動 (PFGE) を行い疫学解析した.その結果 K. pneumoniae の報告とは異なり K1,K2 型は見られず,K9,K15,K26,K31,K43,K47,K55,K70,K79 などの莢膜型株であった.なお血液由来の K55 型 2 株は PFGE パターンもほぼ同一であることから同一株であり,院内感染の存在が示唆された.高頻度に分離された莢膜型 K43 の血液由来 3 株と胆汁由来 1 株は,PFGE パターンが全て異なりそれぞれ別の株であった.また血液由来株と胆汁由来株に共通の株は無かった.病原因子として 1 型ならびに 3 型線毛遺伝子は全ての株が保有していた.尿素分解に関与する ureA も全て保有していた.しかし鉄取り込みに関与する kfuBC,腸管定着に関与する cf29a を保有する株はそれぞれ 1,2 株のみであった.莢膜の mucoid 性を高めK. pneumoniaeの病原性と強く相関するといわれる magAおよび rmpAを持つ株は見られなかった.したがって K. oxytocaによる敗血症と胆道感染に関係する病原因子として,体内定着に関与する 1 型ならびに 3 型線毛の存在が重要であることが示唆された.

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© 2012 社団法人 日本感染症学会
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