2017 年 91 巻 3 号 p. 387-391
2004年から2015年までに当院で診断したCapnocytophaga 感染症を検討した.男性9 例,女性1 例の10例が診断され,年齢は26~79 歳(中央値53.5 歳)であった.症例は化学療法中に歯肉炎を合併した血液悪性腫瘍患者に発症した菌血症(Group A,n=6),健常人に発症した肺化膿症(Group B,n=2),人獣共通感染症としての菌血症(Group C,n=2)の3 群に大別された.Group A とGroup B の原因菌は8 例全例がCapnocytophaga sputigena であり,Group C の原因菌は2 例ともCapnocytophaga canimorsus であった.ディスク法で実施した薬剤感受性試験ではpiperacillin,imipenem,meropenem,doxycycline,minocycline,rifampicinに対しては全ての菌株が感受性であったが,gentamicin,polymyxin B,sulfamethoxazoletrimethoprim に対しては全ての菌株で耐性を示した.その他の抗菌薬に対しては菌株によって異なる感受性を呈したが,Group A から分離同定された菌株はGroup B,C から分離された菌株に比べてpenicillin G,ampicillin,amoxicillin,ceftriaxone,cefotaxime,ciprofloxacin などの薬剤に対して耐性を示す菌株が多かった.Capnocytophaga 感染症は稀であるが,多彩な臨床像を呈し,薬剤感受性も菌株によって異なっていた.適切な抗菌薬治療のためにも積極的な原因菌検索が必要と考えられた.