感染症学雑誌
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破傷風及びジフテリア予防接種に関する研究
第I編ヒト破傷風及びジフテリア抗毒素量測定に於ける受身赤血球凝集反応法の応用
加藤 達夫
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1978 年 52 巻 3 号 p. 70-78

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抄録

高度に純化された破傷風及びジフテリアトキソイドを用いたMicrotiter法による受身赤血球凝集反応 (以下PHAと略す) を確立し, ヒト破傷風及びジフテリア抗毒素量の測定を種々の条件下で行い従来より広く行われている毒素抗毒素中和反応によつて得られた値 (以下NT値と略す) と比較検討し下記の結果を得た.1) 高度に純化された抗原を用いた為, 得られた値は非特異的反応が無く再現性は極めて良好であつた.2) 希釈液にMg++を加えることによつてend pointの判定が明瞭となつた.3) 感作血球を作製する際に用いるbis diazo benzidine液は作製後-20℃に保存すると7日間は使用に耐えられる.4) 被検血清は非働化し羊血球で吸収した後4℃ に密封保存すると3カ月間は使用可能である.5) 従来の方法によるNT値と比較すると抗毒素量の高値のもの程凝集素価値 (HA値と略す) とNT値との比の値即ちHA/NT値は小となり, 抗毒素量の低い群ではHA/NT値は大となる.又抗毒素量別に数群に分けHA値とNT値の相関をみると破傷風, ジフテリア共に全ての群で1%以下の危検率で有意の相関を示した.
以上今回試みたPHA法は非特異的反応が無く, 再現性に優れ経済的であり, 判定迄に短時間ですみ, 又大きな施設設備を必要とせず, 又小児科領域では血清が微量で行えることは極めて有用である.又従来から行われているNT値との比較は, HA値とNT値との相関を求めることにより容易にNT値から換算される.以上より測定に種々の困難をともなう毒素抗毒素中和反応法に代つて, 今後信頼出来る簡易的な方法として破傷風及びジフテリア抗毒素量の測定に受身赤血球凝集反応が広く実用出来るものと期待する.

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