1978 年 52 巻 3 号 p. 79-86
DPT 3種混合ワクチン接種後にみられる副反応の内最も問題になるのは約30%にみられる発熱であり, 殊に乳児では発熱が痙攣をひき起すことがあり注意を要する.本論文はDPT 3種混合ワクチンを接種後, 発熱の有無に拘らずあらかじめ下熱剤を投与し有効に接種後の発熱を抑えるにはどの様に下熱剤を投与すべきかを検討し, 又投与した下熱剤が細胞性免疫及び液性免疫にどの様な影響を与えるかを研究したものである.その結果は下記の通りでる.
1) DPT 3種混合ワクチンを接種後, 3時間目, 及び9時間目にアセチルサリチに酸10mg/kg投与すると最も有効に発熱が抑えられる.
2) 1) の方法でアセチルサリチル酸剤を投与した後の血清破傷風及びジフテリア抗毒素の産生は, 非投与者と比して差は認めない.
3) アセチルサリチル酸10mg/kg投与後24時間目のリンパ球機能をPhytohemagglutinin刺激による3H-thymidineのとり込みで調べると非投与群との間に差は認めない.
以上より下熱剤として最も一般的であり, 又近時免疫抑制作用があると考えられているアセチルサリチル酸をDPT 3種混合ワクチン接種後, 3時間目, 9時問目に各々10mg/kg用いると, 発熱は有意に抑えられ, 又液性免疫, 細胞性免疫に悪影響は及ぼさないものと考えられた.