感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
気管支拡張症患者の喀痰より分離されたPasteurella multocidaについて
渡辺 一功南出 和喜夫
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 55 巻 11 号 p. 833-839

詳細
抄録

Pasteurella multocidaはグラム陰性の小桿菌で, 以前より動物の出血性敗血症, 家禽コレラの起炎菌として獣医学の領域で問題となつていたものである.人での感染症としては猫および犬などの動物による咬傷または擦過傷による局所化膿症がほとんどであり, このほかにも敗血症, 髄膜炎などの全身感染症, 慢性呼吸器感染症を基礎疾患としたものに気道感染症におこすものなどが欧米では報告されているが, 本邦では局所化膿症での膿, および中耳炎症例での耳漏より本菌を分離した症例は報告されているが, 未だ本菌による全身感染症や感染症の報告はないようである.
我々は53歳, 男性の農業に従事している気管支拡張症患者の喀痰より本菌を連続的に純培養状に分離した症例を経験したので, この細菌学的検討と, 本菌に感受性をもつST合剤を投与して著効を示した臨床経過および本菌の消長を報告するとともに, 本菌による呼吸器感染症について若干の文献的考察を加え報告し, 今後の本菌の呼吸器感染症における意義について検討した.

著者関連情報
© 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top