感染症学雑誌
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静脈内注射用破傷風免疫ヒトグロブリンTIG (i) の臨床的研究
I. 血清抗毒素の消長
海老沢 功松橋 直山本 昭夫黒須 吉夫大塚 敏文
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1981 年 55 巻 2 号 p. 92-100

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抄録

破傷風治療に用いる抗毒素は馬を免疫して作つたもの (TAT), あるいはヒト免疫グロブリンより成るもの (TIG), 最近ではとくに後者が主として使われている. 後者は筋注im用であるのでTIG (m) と呼ぶ. これは通常3,000~5,000国際単位iuが使われるが30~50m1に相当し, これを筋注される患者には負担がかかる. 静注iv可能なTIGとしてTIG (i) が開発されたのでTIG (i), TIG (m), TATを種々なルートから注射して血中抗毒素の消長をしらべた.
TIG (i) は低温エタノール処理して得られた免疫グロブリンをさらにプロピレングリコールで処理し, IgG aggregateを除去したものである.
抗毒素の排泄速度はTAT, iv>TIG (i), iv÷TIG (m), iv>TIG (m), im+TIG (i), iv>TIG (m), i. m. という結果が出た.
TIG (m) のim注射では最高値に達するのに2~4日かかり, 注射量の約1/3しか流血中に入らない. TIG (i), TIG (m), TATの静注では全量が血管内に入り, 注射後速かに最高値に達する. またTIG (m) の筋注では必らずしも注射量に比例して高い値が得られなかつたが, 排泄速度は最も遅かつた.
血清中抗毒素価が0.01iu/m1の値が持続する期間はTIG (i) の静注後, 1,500iuで約7±2週, 3,000iuでg±2週, 250iuでは2~3週であつた.
静注可能なTIG (i) は破傷風の治療と予防に十分使用しうる理想的な製品と考えられる.

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