感染症学雑誌
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血清学からみた1980年初冬のA型インフルエンザの流行の動態
徳本 静代武井 直己瀬川 和幸
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1982 年 56 巻 3 号 p. 193-199

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抄録

1979~1980年のインフルエンザは複数の型のウイルスによる流行であったが広島県でもA (HIN1) 型とA (H3N2) 型の両ウイルスが分離された.発症者 (41名) ペア血清と非発症者 (234名) 血清を供試して, HI反応によりA (HIN1) 型の流行とA (H3N2) 型の流行の疫学的検討をするとともに, ゲルク揖マトグラフィ (SephacrylS-300Super負ne) により分画された (各分画についてmicro ouchterlony法でウサギ抗ヒト血清を用い, IgM, IgG, IgAおよびα2マクログロブリンの同定を行いインヒビターの含まれるα, マクログロブリンを除去した) 発症者ペア血清のIgMおよびIgG (lgAを含む) 分画におけるこれら両型のウイルス抗原に対するHI抗体価の変化を明らかにすることで流行に関与した両ウイルスの動態を具体的に把握しようとした.発症者ペア血清のHI抗体価の有意な上昇からA (HlN1) 型とA (H3N2) 型の流行を確認したが, IgG (lgAを含む) 分画におけるHI抗体応答が著しく上昇してこれを裏付けた.
感染ウィルスが確認された発症者集団の回復期血清のHI抗体価のG, M. (A/USSR/92177 (HlN1);1: 547, A/山梨12/77 (H3N2);1: 427) とHI抗体価の逆r字型分布パターンを感染の指標とした場合, 非発症者血清においてもA (HlN1) についてはその感染指標に近いものが認められたが, A (H3N2) 型についてはそれが認められず, A (HIN1) 型が流行の主流であったものと推察された.IgM抗体のもつ臨床的意義から感染ウイルスの抗原刺激の時期を把握しようとしたが, IgM分画で認められたHI抗体応答からは直接的には明らかにされなかった.したがってA (HIN1) 型とA (H3N2) 型の同時流行については明らかにすることができなかった。

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