感染症学雑誌
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栃木県の1979年7月から1980年6月までのブタ血清に対するA型インフルエンザウイルスの血清疫学的研究
新堀 精一新島 恭樹川上 隆薩田 清明武内 安恵
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1982 年 56 巻 6 号 p. 496-508

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抄録

1979年7月から1980年6月における栃木県下のブタを対象に, その血清中のA型インフルエンザウイルスに対するHI抗体価を測定し, 血清疫学的研究を行うと共に, 自然感染ブタにおける移行抗体について検討し, 次のような成績が得られた.
1) Aブタ型株は, ブタの間で絶えず流行が繰り返えされ, 一旦, 流行すると, その拡大も激しく, また, 獲得HI抗体も高く, その対象地区のHI抗体保有率が100%6に達することが認められた.
2) Aホンコン型株は, Aブタ型株ほど激しい流行は呈さず, A/Bangkok/1/79株の月別の抗体保有率は, 肉用ブタで10~50%6を示し, 一般に緩慢な流行の持続が認められた.
3) A/Bangkok/1/79株に対する抗体陽性のブタで他のAホンコン型の動きをみると, 最近の流行株はもとより, A/山梨/20/75株のような旧い株にも19.2%6の抗体保有率が認められた.
4) Aソ連型株に対する抗体陽性ブタが2頭に認められた.
5) 母ブタから初乳, 常乳および子ブタ血清へのA型インフルエンザウイルスの抗体の移行は, 母ブタの抗体価のレベルに左右され, 母ブタのA/NJ/8/76株のHI抗体価2,048倍のもので, 初乳1,024倍, 常乳256倍および1ヵ月齢の子ブタ血清で64倍の抗体の移行を認めたが, 生後2, 3ヵ月齢に達すると, その値は16倍未満に低下した.

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