感染症学雑誌
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富山県O町における溶血連鎖球菌感染症の流行と患者発生施設児童の保菌状態追跡調査
児玉 博英刑部 陽宅岡田 伊津子畑 祥子山崎 茂一久保 義博高藤 昭橋爪 淑子尾崎 一郎
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1983 年 57 巻 12 号 p. 1060-1066

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抄録

1. 1980年6月から, 富山県0町の保育所・幼稚園を中心として, 溶連菌感染症・狸紅熱の流行および散発的発生が相次いだ. まず, 6月から7月にかけて, 同町のO小学校校下のA保育所・B幼稚園を中心として, 溶連菌A群M12型・エリスロ・マイシン耐性菌による上気道感染症・狸紅熱様疾患のかなりの規模の流行 (患者数77名) があった. 次いで9月から11月にかけて, 隣接するK小学校校下のC保育所・D幼稚園・E幼稚園を中心として, 同じくA群M12型だが, エリスロマイシン感受性菌による同様疾患の小規模な流行 (患者数21名) が起り, その間同校下の患者2名からはA群B3264型菌も分離された. 12月に入り, 初めのA保育所で流行には至らなかったが, A群M1型菌による狸紅熱が2例発生した.
2.各患者発生施設の児童について, 情報入手後速かに咽頭溶連菌保菌検査を行い, 流行時または散発発生時には, バックグラウンドの集団に患者分離株と同一の菌型・薬剤感受性パターンの健康保菌者が多数存在することが確認された. しかしながら, O小学校, K小学校校下ともに, 各施設児童の間には流行終息後流行菌型のA群M12型菌保菌者は急激に減少したが, 同年12月には両校下ともにA群M1型菌の保菌者が増えた.
3. 流行翌年の追跡調査により, 0小校下では流行菌型の保菌者が殆ど見出されなかったが, 12月には前年同期にA保育所に多かったA群M1型菌保菌者がB幼稚園と0小学校に少数見出された. K小校下では, C保育所の1クラスに流行菌型の保菌者が集中して見出された以外は一般に溶連菌保菌率が低く, 前年K小学校に多かったA群M1型保菌者も極めて少なくなった.

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