感染症学雑誌
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猩紅熱多発および非多発地区におけるA群溶連菌の侵襲状況
森田 盛大金 鉄三郎茂木 武雄高山 和子山脇 徳美斉藤 志保子庄司 キク藤宮 芳章柴田 芳実白取 剛彦
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1983 年 57 巻 12 号 p. 1067-1074

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抄録

狸紅熱多発 (罹患率201.3) 地区の西目町と非多発 (3.6) 地区の十文字町におけるA群溶連菌の侵襲1動向を明らかにするため, 1972年6月~1975年1月, 両地区の小学生 (1~3学年) 577名及び幼稚園児122名 (西目地区のみ) を対象として, A群溶連菌の保有状況を9回調査した結果, 以下の如き成績が得られた.
1) A群溶連菌は5.2% (320/6, 206検体) の陽性率で分離されたが, 有意の地区差はなかった. また, いずれかの検査で分離陽性となった児童は36.5% (255/699名) であったが, 有意の地区差はなかった. 2回以上分離陽性となった児童は54名 (7.7%) であったが, 同一菌型の再分離されたのは7名 (1%) に過ぎなかった. なお, この期間中, 西目地区では39名の狸紅熱患者が発生したが, 十文字地区では全く発生しなかった.
2) 分離率は概ね1~2月と5月に高く, 9月に低率であったが, 西目地区の分離率のみが狸紅熱発生とほぼパラレルに推移した. また, 年齢的には8~9歳の分離率が最も高く, この年齢群におけるA群溶連菌の伝播搬送的役割が示唆された. 男女差はなかった.
3) 分離菌型は10種類であったが, 西目地区での12型と5型が十文字地区より, また, 十文字地区でのB3264型と1型が西目地区より有意高率に分離された.
4) 両地区の狸紅熱発生差は上記成績によっても十分解明されず, 他の因子の検討が必要と考えられた.

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