1983 年 57 巻 3 号 p. 273-279
我々は, ヘビなどの爬虫類の腸内常在細菌として知られているEdwardsiella tarda (E.tarda) による敗血症を経験したので報告する. 症例68歳男性. 臨床診断: 糖尿病, 肝癌, 胃癌 (重複癌) 胆管炎. 経過: 昭和54年8月30日, 発熱, 悪寒戦藻及び黄疸のため入院. 入院時より持続する悪寒戦慎及び間欠熱と炎症所見より敗血症を疑い, 動静脈血及び便の培養施行し, E. tardaを分離培養しえた. 臨床像と培養成績から本菌を病原と判断し, 抗生剤を投与. 投与開始5日目から体温37℃前後と解熱し, 検査所見の改善もみられた. 又, 同時に施行した動静脈血及び便の培養でも, 本菌の陰性化をみた.
敗血症の誘因としては, 悪性腫瘍に対する抗癌剤の投与ならびにケトアシドーシスを招く糖尿病など感染抵抗性の減弱した患者に胆道感染症が合併して敗血症を誘引したものと推測される.
以上, 本症例は, 血液, 便よりE. tardaを分離培養しえ, さらに血液株では, コリスチンに対し感受性であった稀少な症例を経験したので報告した.