感染症学雑誌
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Chlamydia trachomatisの尿道炎患者からの分離
加藤 直樹伊藤 康久出口 隆兼松 稔坂 義人河田 幸道西浦 常雄鄭 漢彬土井 達朗酒井 俊助松田 聖士
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1984 年 58 巻 1 号 p. 29-38

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抄録

非淋菌性尿道炎 (NGU), 淋菌性尿道炎 (GU) などの男性症例および尿道炎男性のpartnerやurethral syndromeなどの女性症例を対象に, 臨床材料からChlamydia trachomatisの広汎な分離を試みた.
C. trachomatisの分離にはcycloheximide処理のMcCoy cellを用いた. また封入体の検出はGiemsa染色後, 暗視野と明視野による観察により行なった.
総検体数は396検体で, うち73検体, 18.4%よりC. trachomatisが分離された. 初診時の男性症例ではNGU 30/59 (51%), GU 22/98 (22%) でChlamydiaが陽性であった. diplococcusが多核白血球外にしかみられなかった症例5/11 (45%), 分泌物中の多核白血球が≦3/hpfの症例6/39 (15%), 分泌物の鏡検がなされなかった症例5/14 (36%), 化療中の症例0/12 (0%), 他の尿路性器疾患例1/13 (8%) およびcontrol例1/31 (3%) よりC. trachomatisが分離された. 女性症例では尿道炎症例のpartner10例中3例 (30%), urethral syndromeの17伊1中1例 (6%) でC. tmchomtis力陽性で, 化療中の3例およびhealthy controlの2例ではChlamydiaが分離されなかった.
以上より, 我国においてもC. trachomatisによる尿路性器感染がかなりの頻度で存在し, NGUの少なくとも半数, GUの約1/5の症例がC. trachomatisの感染をうけていることが明らかとなった. またChlamydia陽性男性のpartnerからは高率にC. trachomatisが分離された.

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