1984 年 58 巻 1 号 p. 39-53
昭和55年4月から昭和58年3月までの3年間に, 全国590例の肺炎球菌感染疾患患者より分離した肺炎球菌を型特異的抗血清を用いて型別した.
成績
1) 590の分離株は, 43のDanish nomenclatureに属し, 多い順にみると3型 (12.7%), 19F (9.3%), 23F (6.8%), 6B (5.9%), 6A (5.9%), 14 (4.9%), 11 A (4.1%), 19 A (3.7%), 9 V (3.6%), 22 F (3.1%) およびその他の型であった.
2) 全分離株のうち430株 (72.9%) が市販予定の23価肺炎球菌多糖体ワクチンに含まれるワクチン型であり, 160株 (27.1%) は非ワクチン型であった. ワクチン型の検出率は, 検体別にみると血液, 髄液, Transtracheal aspirate (TTA) などの168検体で76.2%, 喀痰・咽頭スワブの326検体で66.9%, 中耳滲出液の74検体で90.5%であった. また診断名別では, 髄膜炎・敗血症が79.1%, 呼吸器系感染症が66.8%, 中耳炎が89.3%であった.
人体観察で, ワクチン菌型6Bによる交叉免疫の知られている菌型6Aの35株を含めるとワクチンで防御される菌型の総分離株数は465株 (78.8%) となる. 検出率は検体別にみると血液, 髄液, TTAなどで83.3%, 喀疾・咽頭スワブで73.3%, 中耳滲出液では91.9%であった. さらに診断名別では髄膜炎・敗血症で87.0%, 吸器系感染症で71.9%, 中耳炎で92.0%となる. なお菌型の分布には年齢差, 地域差はないと考えられた.