感染症学雑誌
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高齢者に発症したWaterhouse-Friderichsen症候群の一例
高松 健次宮本 修西本 正紀古川 宏太郎田中 勲
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1984 年 58 巻 1 号 p. 54-59

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抄録

通常の日常生活を送っていた64歳の男性が, 突然ショックに陥り入院1時間40分後に死亡した. 当初より発熱や皮下出血はみられず, CTscanにてクモ膜下出血の像を認めたので, 死因をクモ膜下出血と考え, 死後1時間半後に剖検を行なった. 剖検によりクモ膜, 肺, 胸膜, 心内膜下, 胃腸管粘膜と共に両側副腎皮質に肉眼的出血を認めた. 組織像において, 流行性脳脊髄膜炎菌と考えられるグラム陰性双球菌が, 一部は末梢血中の好中球胞体内に貧食されながら, 大量に全身諸臓器の小血管内に充満している像が認められた. しかしながら各組織の炎症反応はほとんど見られず, 髄膜炎も認められなかった. 以上の所見より, 激症型髄膜炎菌敗血症 (fulminant meningococcemia) によるWaterhouse-Friderichsen症候群 (以下WFSと略) と判明した. WFSの成人例は少なく本邦においては60歳以上の発症例は未だ報告はなく, 高齢者である本症例の臨床像は非典型的で, かつきわめて激烈であり, その病理像も特異であった.

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