感染症学雑誌
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単純ヘルペスウイルス脳炎のウイルス血清学的診断に関する研究
ELISAの診断的意義
水谷 裕迫水谷 弘子亀井 聡高須 俊明倉田 毅山本 あつ子青山 友三大谷 杉士
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1984 年 58 巻 3 号 p. 187-196

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抄録

単純ヘルペスウイルス脳炎 (Herpes Simplex Virus Encephalitis, HSVE) のウイルス血清学的診断におけるELISA (Enzyme-Linked-Immunosorbent Assay) の意義を, さきに報告した単純ヘルペス脳炎研究会の全国症例で検討し, 次の結果をえた。
(1) 成人ではIgM抗体が低く, かつそれに非特異的反応がみられた.
(2) ELISAによるIgG抗体の測定で, CFやNTより早期に, 発病初期の髄液中HSV抗体の上昇を検出できた.
(3) 10倍稀釈髄液のELISAで, それが陽性になった率は, 上記研究会判定のA群 (HSVE) では95% (40例中38例), B群 (ほぼHSVEと考えられた群) では66% (9例中6例), C群 (他のウイルス性脳炎) では5% (18例中1例), D群 (他の中枢神経疾患) では33% (12例中4例) であった.
(4) 密度勾配遠心法による分析, 血清と髄液のアルブミン比の測定等から, D群陽性例の一部では, 血液から髄液への抗体移行が推定された.
(5) 病日経過中に, 髄液のHSV抗体がELISAで測定しても, 陽性に上昇してこない場合は, 殆んどHSVEを否定しうることがわかった.

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© 日本感染症学会
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