感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
福井県における寄生虫病の頻度評価
高田 伸弘立藤 規子緒方 昭
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 58 巻 7 号 p. 596-602

詳細
抄録

最近の寄生虫感染の疫学的変遷あるいは地域における新設医大の調査研究の方向を考える一資料として, 福井県における寄生虫病の発生頻度について, 1982年4月教室開設と同時に調査を実施した.
県医師会員に対するアンケート調査の回収率は低く16%であったが, 寄生虫病に対する関心度は地区別の平均で72%であった. 専門別医師の回答数は予想通り内科系に多かったが, 皮膚科の関心も高かった. 過去10年を境とした県内医師における病種ごとの症例経験度では, 追跡調査や文献的考察も加えた結果, 風土病的性格のものは減少する反面, 日和見感染性原虫症や人獣共通寄生虫症とくに幼虫移行症は増加の傾向にあり, さらに北陸地方の特色としてはアニサキス症や広節裂頭条虫症が多かった. 節足動物被害は皮膚科に普通であるが, 慈虫病などはまだ不明な点が多かった.
教室開設から1年半の間に持込まれた検査依頼は計13件であったが, 病種としてはアンケート結果と同様の傾向を示した.
県内での寄生虫保有状況についての実地調査の手はじめとして丸岡町で検便・検肛を実施できたが, 土壌媒介性蠕虫類が減少した陰に, 通常の集団検査では検出できない原虫類は未だ温存されていることが分った. また, 県内に散在する蠕虫浸淫や嶢虫の蔓延状況も残された課題である.

著者関連情報
© 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top