感染症学雑誌
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散発下痢患者を対象としたCampylobacter属菌の検出状況とCampylobacter jejuniにたいする37薬剤の抗菌力について
深見 トシヱ鴻巣 晶子彦坂 恵子柏 真知子右田 琢生西川 慶繁村田 三紗子今川 八束斎藤 誠
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1984 年 58 巻 7 号 p. 613-627

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抄録

内科, 小児科および感染症科の散発下痢患者7,246例を対象として, 1979年4月から1983年12月 (感染症科は1981年12月まで) の4年9ヵ月間にわたり, Campylobacter属菌の検索をおこない次の成績を得た.
内科C. jejuni 5.2%, C. coli 0.1%, C. fetus subsp. fetus 0.04%, 小児科C. jejuni 14.5%, C. coliO.2%, 感染症科C. jejuni 11.2%に認められた.このうち内科, 小児科外来患者201症例について疫学的調査をおこなった結果, 年齢分布は6ヵ月から82歳の広範囲であり, 10歳以下の若年者が全症例の61%(123例) を占め, 特に乳幼児から多く検出された. 性別検出頻度は男性119例, 女性82例で15歳以下では性比が3: 2となり, 男子から多く検出された. しかし成人では性別による差は特に認められなかった.
主な臨床症状は下痢100%, 腹痛が約半数に, 特に小児では発熱73.6%, 血便は39.3%に認められた. 複数菌感染例は21例 (10.4%) に認められ, これらの21例中Salmonellaが15例, V. parahaemolyticus 4 例, Y. enterocolitica1例, そして1例はSalmonellaと病原大腸菌 (EPEC) の2菌種が同時に検出された. 排菌数については発病後3日までの50症例のうち44例 (88%) が105CFU/g (CFU: colony formingunits) 以上のC. jeuniを排菌し, 病日が進むにしたがって排菌数が減少する傾向を示した.
C. jejuniにたいする37薬剤の抗菌力測定をおこない次の結果を得た.Macrolide系5剤, Aminoglycoside系5剤, Tetracycline系2剤, Chloramphenicolの抗菌力は強く, そしてPyridonecarboxylic acid系6剤のうちでは最近開発されたDL-8280, AT-2266, MiloxacinとNorfloxacinの抗菌力が強かった.
そのほかPenicillin系4剤, Cephalosporin系10剤, Novobiocin, Colistin, Polymyxin B, Bacitracinの抗菌力を測定したが, Ampicillinを除いては, その抗菌力は弱かった.なおErythromycinには25μg/mlの高いMIC値を示す1株 (0.7%) が認められた.

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