感染症学雑誌
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リケッチア感染症の免疫学的研究
ヌードマウスにおける実験的つつが虫病リケッチア感染症
河村 伸一
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1984 年 58 巻 7 号 p. 647-662

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抄録

リケッチア感染症の免疫学的防御機構を研究するために, つつが虫病リケヅチアの強毒Gilliam株ならびに弱毒入江株を用いて, 先天的に胸腺を欠如するヌードマウスにおける感染経過, 抗生物質治療の効果血清抗体の推移ならびに免疫血清あるいは脾T細胞移入の効果を検討した.
ヌードマウスは強毒株だけでなく弱毒株に対しても高い感受性を示し, テトラサイクリン治療によっても回復しなかった.
強毒株感染ヌードマウスには7S抗体だけでなく, IgM抗体の上昇もみられなかった. 免疫血清の移入は, 正常マウスの場合と異なって, ヌードマウスにはほとんど防御効果を示さなかった. 免疫脾T細胞の移入は, 正常マウス, ヌードマウスともに有効な防御効果を示したが, ヌードマウスではやや効果が劣っていた. この効果はdonorマウスの免疫10日後にはわずかながら認められるようになり, 免疫1カ月以降に強固となり, 12ヵ月後まで減弱することなく持続した. 免疫脾T細胞の抗Thyあるいは抗Lyt-1.2同種血清処理により感染防御効果は消失し, 抗Lyt-2.2同A種血清処理によっても著明に減弱した.
弱毒株感染ヌードマウスに対しては, 免疫脾T細胞と同様に, 非免疫脾T細胞の移入によっても十分な防御効果が得られた。しかし弱毒株免疫脾T細胞の移入は, 強毒株による攻撃に対してまったく防御効果を現さなかった.

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