感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
Salmonella血清型Typhimuriumの生物型別とファージ型別
仲西 寿男村瀬 稔貫名 正文
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 58 巻 9 号 p. 894-902

詳細
抄録

わが国で各種材料から分離されたSalmonella血清型Typhimurium2549株についてDuguid (1975) の形式による生物型別を, またそれらのうち200株についてGershman (1977) のシステムによるファージ型別を実施し, 両法の疫学追究の手段としての有用性をしらべた.また生物型別に先だって用いるテストの標準化を行った.
1) 生化学テストの標準化のためにDuguidらの記載培地に多少の変更を加え, 糖発酵テストには基礎培地を半合成として, 糖を3%に加え, また酒石酸利用テストにはKauffmann-Petersen培地を用いて, いずれにも109/ml菌液一白金耳を接種することとした.
2) 全供試菌株は第一次生物型別で17型に分かれ, 生物型1と26がもっとも優勢で, それぞれ60および18%を占めた. 材料別にみると, ヒト, 牛肉, 豚肉およびと場環境由来株は生物型1に, 一方鶏肉株では26に偏よる傾向が認められた. また多少ながら生物型分布の地域差も認められた.
3) 第一次生物型とファージ型には関連性は認められず, また05+抗原型とOr抗原型 (Copenhagen型) との生物型間の相違もみられなかった.
4) 集団食中毒6事例からの患者株は第一次生物型からみても第二次生物型からみてもそれぞれ単一で, さらに一事例では推定原因食品由来株の生物型も患者株のそれと一致した.
5) ルーチンの疫学調査には, その手数の上からみてまず第一次テストで型別し, 多数の菌株の集積した生物型でさらに第二次テストで細分するのが合理的であろうと思われる.

著者関連情報
© 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top