感染症学雑誌
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溶血レンサ球菌の新選択増菌培地に関する研究
小嶋 尚夫佐藤 麿人
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1985 年 59 巻 9 号 p. 860-868

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抄録

他菌の混在する検査材料から溶血レンサ球菌を選択的に増菌し, その分類と検索を効果的に行うための選択増菌培地を考案しSEB培地と名付けた.同培地の選択増菌性について検討を行った.溶血レンサ球菌に対する増菌効果とブドウ球菌に対する抑制効果は増菌培養24時間以後より顕著になった.A群, B群, C群, G群に属する溶血レンサ球菌は標準株, 新鮮臨床分離株いずれもが104~106の増菌率を示し, 同培地はこれら各群の溶血レンサ球菌の検出に広く有効であることが認められた.咽頭に常在する菌数に近い菌数を接種して各種の菌の生育試験を行った結果, β-Streptococcusは顕著な増殖を示すのに対し, Staphylococcus aureusをまいずれの菌株も生育が抑制または阻止された.S.epidermidisは生育が抑制され, Neisseriaは生育が阻止された.α-Streptococcusでは生育が抑制される菌株の他に増菌する菌株が認められた.Streptococczas faecalisは増殖した.その他, Candida albicans, E.coli, Pseudomonasはいずれも生育が抑制された.SEB培地と他の増菌培地の選択増菌効果を比較した結果, SEB培地が他に比べてブドウ球菌等の生育を効果的に抑制すると同時に, 溶血レンサ球菌に対する増菌効果もすぐれていることを認めた.SEB培地に接種した溶血レンサ球菌は4℃1週間そのまま保存でき, ブドウ球菌はさらに抑制された.同培地で溶血レンサ球菌を凍結保存することができた.SEB培地は極めて安定であり, 5~7℃下で長期間保存することができた.

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