感染症学雑誌
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間接免疫ペルオキシダーゼ染色を用いた各種抗生剤の抗Chlamydia trachomatis効果測定
坂内 久一宮沢 博芦原 義守
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1986 年 60 巻 10 号 p. 1140-1146

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抄録

Chlamydia trachomatis (C.trachomatis) に対する各種抗生物質 (薬剤) の増殖抑制効果, 致死効果および併用効果を調べた.測定には, 24穴プレートに培養したHeLa229細胞, 試験株として標準株 (3種) と分離株 (7種), 封入体の染色に間接免疫ペルオキシダーゼ (IP) 法を用いた.その結果, 各薬剤の最小発育阻止濃度 (MIC) は, 従来のギムザやヨード染色での成績と基本的には一致する成績が得られた.
最小致死濃度 (MLC) はMICの4~8倍高い濃度であった.しかし, 既に形成した封入体内の感染性粒子を完全に不活化するためには, doxycycline (DOXY) ではMLCの50倍以上の薬剤濃度と52時間以上の処理が必要であることがわかった.
併用効果はDOXY-erythromycin (EM), EM-chloramphenicol (CP), CP-DOXY, ampicillin (ABPC)-DOXY, ABPC-EM, ABPC-CPについて調べた.その結果, これらの薬剤は互いに独立してC.trachomatisの増殖に影響を及ぼすことが明らかになった.これは, 淋菌とC.trachomatisの同時感染患者の治療にABPC-DOXY, ABPC-EMなどの併用が効果的である可能性を示すものと考えられる.
24穴プレートの培養系に直接IP法を施すことにより, 薬剤効果の測定操作は簡便になり, 封入体の検出も容易であった.従って, 本法は, 抗生剤の試験管内活性の測定にきわめて有用な方法であると思われる.

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