感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
Mycoplasma pneumoniaeに対するモノクローナル抗体の作製: 抗体特異性, 抗原解析及び迅速抗原検出法の検討
桑原 健介
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 62 巻 11 号 p. 1010-1021

詳細
抄録

Mycoplasma pneumoniaeに対するモノクローナル抗体を, P3-X63同Ag8-U1マウスミエローマ細胞株を用いた細胞融合法で作製した.M.pneumoniaeに対する抗体を産生する117株のハイブリドーマクローンのうち, ELISAにて最も反応性の高かった5系のモノクローナル抗体を更に詳細に検討した.これらのモノクローナル抗体は, 著者が検討したM. pneumoniae以外の各種常在マイコプラズマ標準株 (M.genitalium G37, M. fermentans PG18, M. hominis PG21, M. salivarium PG20, M.orale CH19299, M. buccale CH20247, M. faucium DC333, Ureaplasma urealyticum T960) には, 交叉反応を示さず, 種特異的な反応を示した.Immunoblottingの成績より, これら5株のモノクローナル抗体のうち, 4株が認識する抗原決定基は, M. pneumoniaeの分子量約45,000の蛋白中にあり, 耐熱性で, トリプシン消化性のペプタイド部分であった.他の1株が認識する抗原決定基は, M.pneumoniaeの分子量約40,000の糖蛋白中にあり, 糖鎖とペプタイドにまたがる部分, または, 糖鎖に関連ある部分であると考えられた.これらの種特異的モノクローナル抗体を用いて, 本菌の抗原検出感度をSandwich ELISAで検討した.その結果, 耐熱性ペプタイドを認識する8A4A5を用いたSandwich法での検出感度が最も良く, マイコプラズマ抗原液を1%牛血清アルブミン加PBS-Tで希釈し, 2段階希釈系列を作製して測定した場合, M. pneumoniaeMac株では総蛋白濃度で16ng protein/ml (約104CFU/ml) で, M.pneumoniae臨床分離株では, 22株中21株 (95%) が250ng protein/ml (約105CFU/ml) 以下で検出可能であった.また, M.genitalium以外の各種常在マイコプラズマ標準株は検出しなかった.一方, M, pneumoniaeと抗原的に区別不可能とされるM. genitaliumは1,950ng protein/ml以上の高濃度でしか検出されなかった.

著者関連情報
© 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top