1988 年 62 巻 11 号 p. 931-937
近年流行の慈虫病患者から分離されるRickettsia tsutsugamushiの血清型には, 従来から知られているGilliam, Karp, Kato型リケッチア以外に, これらと異なる血清型のShimokoshi, Kawasaki, Kuroki型リケッチアの存在が見出されている.そして新潟地方での分離株はGilliam型, Karp型のリケッチアが多いが, 九州地方の分離株は殆どすべてマウスに対し弱毒性のKawasaki型とKuroki型であることも明らかとなってきている.本研究ではこれらの性状を異にするリケッチア間での化学療法剤感受性の差異の有無を明らかにすることを目的として, 新潟地方で分離したGilliam型の3株, Karp型の2株, Shimokoshi型の1株と, 宮崎及び長崎地方で分離したKawasaki型の4株, Kuroki型の5株, 及び標準株であるGilliam, Karp, Katoの3株, 計18株について, 6種の抗生物質に対するMICを測定して比較した.その結果, すべての株に対してTetracycline, Minocycline, Dimethylchlortetracycline, Leukomycinはいずれも0.012~0.391μg/mlの範囲内のMICを示し, Chloramphenico1のMICは0.39~6.25μg/mlであった.Ampicillinはいずれの株に対しても100μg/mlの濃度で全く発育阻止を示さなかった.
以上の成績より, 各分離株はその血清型や分離地域に関係なくいずれもこれらの抗生物質に感受性を示すこと, マウスに対する毒性の異なる株間にも感受性の差異がないことが判明した.