感染症学雑誌
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年齢別破傷風・ジフテリア抗毒素保有率
高山 直秀南谷 幹夫近藤 了亀山 昭一長岡 芙美子
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1988 年 62 巻 7 号 p. 657-663

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抄録

本邦において破傷風患者数は, ジフテリア患者数と同様に近年著しく減少しており, 特に死亡率の減少は若年層で著しい. 我々は破傷風抗毒素価を年齢別に調査し, 年齢別ジフテリア抗毒素価と比較した.
平均破傷風抗毒素価は6~17歳の各群では1.0Hemagglutination Unit (HAU)/ml以上であり, 18~30歳の各群では0.15~0.6HAU/mlであったが, 31歳以上の年齢では平均抗毒素価が0.02~0.06HAU/mlに低下し, 抗毒素陰性者の数も増加した. 一方ジフテリア抗毒素の場合, 平均抗毒素価は36~40歳群で低下しているものの, 全年齢群で0.03HAU/ml以上であり, 抗毒素保有率は26~40歳の間では年齢が増すにつれて低下する傾向がみられたが, 41歳以上で再び上昇していた.
各年代間および破傷風とジフテリアとの間でみられた平均抗毒素価および抗毒素保有率における差は, 本邦で両疾患に対する予防接種が開始された時期および用いられたワクチンの種類, さらに疾患流行の有無と相関があると思われた. すなわち, 青少年層では予防接種によって破傷風およびジフテリア抗毒素を獲得し, 中高年齢層では顕性ないし不顕性ジフテリア感染によっててジフテリア抗毒素を獲得したものと思われる.

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